コラムColumn

2024.03.31コンサルティング

スタッフ雇用人数は適正か? #なんとなくで雇用計画を立てていませんか?

今回はスタッフ雇用人数の考え方について書いていきたいと思います。
昨今、賃金上昇が加速化しており、経営者である先生方にとっては非常に頭の痛い問題だと思います。

スタッフ数は潤沢に欲しいけれど、給与や賞与の支払いを考えると不安... 
多くの先生方が直面する問題ではないでしょうか?

では質問します。
自院のスタッフ数は適正だと思いますか?

この質問にすぐ答えられる先生は、そんなに多くないと思います。
何故か?考え方を教わっていないからではないでしょうか?

1、なんとなく雇用している
2、衛生士から応募があればとりあえずは雇用している


逆に、以下のような医院もあるかと思います。

3、既存スタッフ数から増やさない
4、必要最低限の人数しか雇用しない


上記1,2は、ある程度財務面が落ち着いていて、キャッシュにあまり不安がない先生に多いパターン
上記3,4は、経営状況が芳しくない、あるいは自分の取り分に重きを置くケチな先生に多いパターン

あえてケチというマイナスで汚ない言葉を使いましたが、これからのスタッフ雇用は自分の取り分優先では成り立たないと考えなければなりません。自分だけが儲けてスタッフへのコストはかけない。そういう考えでは、良い人材は確保できませんし、医院としても成長することはできません。

売上が上がらないから、スタッフ雇用はできない。
のではなく、スタッフにかけるコストをケチっているから売上が伸びないのです。
それは、給与しかり、雇用人数しかりです。

そもそも大前提、経営状態が劇的に思わしくない場合は、スタッフ雇用以前の問題です。
院長の今までの経営に何かしら大きな問題があったと推測されるところかと思います。
・そもそも腕が悪い
・怖い
・説明がない
・スタッフも愛想がない
・etc...


経営がうまくいってない医院の根本は上記のようなところが患者さん評価としてあるのではないでしょうか?
ただ、日々患者さんに、「うちの医院どうですか?」とアンケートやヒアリングをしているわけではないので、患者が減少してから気づく、または減少していても理由を他に求めるということで、根本改善ができない。

そういった医院は、よほど意識を切り替えないと上昇させていくことは難しいわけです。
ましてや、それが長い期間であればあるほど、改善はほぼ不可能に近いと言わざるを得ません。

そういった先生は一部として、では、それ以外の先生方はどうか?
雇用の必須条件として様々ありますが、まずは社会保険完備が挙げられます。
民間企業と同じ条件を最低限持つことが、第一のハードルとなります。

社会保険完備の医院側のコスト
法定福利費として、スタッフさんの保険の半分を持つことになります。
おおよそ給与額面の15%程度を医院側で負担することになります。

これが、億劫でもったいないと思っている先生、
もしいらっしゃれば、この先有能なスタッフは獲得出来ないと思って頂くのが賢明です。
スタッフなしでワンオペで医療を続けていく覚悟を持ってください。
ただ、メンテをするDHが雇用出来ないことで、いつまでも先生がエースで4番です。

年老いて目が見えづらくなる、体力が落ちる、やる気が減少する。
この状態で経営が成り立つでしょうか?

考えただけでもゾッとするのではないかと思います。

共に働く仲間であるスタッフに、民間企業と遜色ない給与や福利厚生を与える意識がまずは必要です。
有給休暇の取得や産休育休は当たり前のこと、診療時間の終わり時間も極力早めることが今後必須になります。
働き方改革という言葉以前の問題で、生活そしていくうえでの在り方が明らかに変化していることを感じて、それに合った雇用をしていくことが医院経営の生命線となってきています。

では本題の適正人数について、書き進めていきます。
まず考え方として重要なのは、誰か休んでも列を潰さずに診療が行えることです。

ユニット台数が4台であれば、最低でも5人
ユニット台数が6台であれば、最低でも7人

※受付を置くか置かないかにもよりますが、最低限列+1名は必要ということになります。

この余りあり雇用を行うことで、有給休暇の完全取得を全面に押し出し、実施することが可能となります。
また、産休育休のスタッフが出た際に、慌てて求人を出すことなくリカバリーが可能となります。

では、経営の観点からいうとどうなるか?
一般的には、人件費率という言葉で20%だ25%だと議論が繰り広げられます。
が、パーセンテージだけで判断するのは非常に危険です。
何故なら、経費は人件費以外のその他の経費(固定費)があるからです。

その他の経費とは、水道光熱費・研修費・接待交際費・支払利息等の人件費以外に毎月必ずかかる経費のことを言います。
その他の経費が少ない医院であれば、人件費のパーセンテージを上げることが可能になり、その他の経費が多い医院であれば、人件費を上げることは難しくなります。(あくまで基本的な考え方です)

なので、先生同士の会話の中で人件費率の話題になった時に、うちは他より高いからスタッフ増員は無理かな...
といった短絡的な考えは持たないで頂きたいと思います。

率だけではなく額で物事を見ることも大事なことです。
売上額が高い医院では人件費率が高くても内部留保できる額は十分にあるというケースもありますし、売上額が低い医院で人件費率が高いと赤字でキャッシュがどんどん減少していくというケースも考えられます。
売上規模が違っている医院同士で、人件費率の話をしてもあまり意味はないということです。

戻ります。
スタッフ適正人数の考え方として目安となるのが、スタッフ生産性です。
先生を除いたスタッフ数と売上のバランスがどうなっているか数値化することで適正か否かを計るやり方です。

A医院 月の売上が6,000,000円
スタッフ数 10人 (受付・DA・DH全て)
6,000,000÷10人=600,000 
スタッフ生産性は、600,000円となります。

B医院 月の売上が6,000,000円
スタッフ数 5人 (受付・DA・DH全て)
6,000,000÷5人=600,000 
スタッフ生産性は、1,200,000円となります。

本来は粗利益で考えるべきところですが、変動費の差異があるので売上で表します。

上記を例にした場合、売上は一緒でありながら生産性は大きく異なることがわかります。
どちらがいいかは他の要素もあるので一概には言えませんが、基本的には生産性が高い方が良いという見方になります。

A医院の60万、これは極端な例なわけですが、これが続くようなら人件費が圧迫して医院経営は成り立ちません。
逆にB医院は適正値であるため、バランスの取れた医院経営が出来ている可能性が高いと考えられます。

ただ、この生産性が高すぎるのも問題で、例えば保険診療メインの医院で1,500,000/人になっている医院は、スタッフの疲弊が明らかであると言えます。要は働かせすぎということです。
※同じ1,500,000/人でも自由診療の割合が高い医院は、それでも適正と言えることもあります。

弊社のお客様のデータから見ると、1,200,000/人が適正スタッフ数の目安になってきます。
DHはお金を生む仕事となりますが、DAや受付は点数に直接的に関与することはありません。
DrとDHがその職種の給与を稼ぐ(言い方は悪いですが)必要性があるわけです。
ただ、受付とDAの働きがあるからこそ生産性が上がるということも忘れてはいけない大事な部分となります。

医院ステージや方向性により考え方も何通りもあるのがスタッフ雇用となりますが、
大枠は以下になるかと思います。

1、余りあり雇用をする(有給消化・産休育休に負けないマンパワー)
2、生産性バランスをみる(オーバーワークになっている場合に雇用する)


人件費の観点と売上上昇の観点、医院ステージ・今後の方向性。
様々な要素がありますが、いろんな角度から見て、自院に適正なスタッフ数を弾き出して頂きたいと思います。
医院経営はスタッフありきです。

今後も賃金上昇が続いていくであろうことを考え、自院の強みや弱みを把握して、スタッフがモチベーションを保ちながら働き続けることができる歯科医院を是非、作り上げて頂きたいと思います。



「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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