コラムColumn

2024.05.31開業支援

新規開業に向けての心構え  #簡単に開業できない時代にどういう準備が必要か Division2

前回のコラムで“新規開業に向けての心構え”として、現在の融資動向や開業後の返済イメージを軸として書かせて頂きました。今回は続編として、新規開業に向けての心構えとして、開業後に重きを置いて書いてみたいと思います。現在、開業を意識検討されている先生は是非最後まで読んで頂ければと思います。

前回のコラムはこちら

融資交渉を終え、いよいよ開業に向けて走り出すことが可能になったとして書き進めます。
まずは、「おめでとうございます!」となるわけですが、まだスタート地点には立っておらず、とりあえず事業を起こすためのお金は用意できただけであると考えてください。

お金を借りれた=事業が成功する

ではありません。
お金を借りれても、事前準備や開業後の医療提供イメージが漠然としていれば、あっという間に倒産ということもあると念頭にお話しさせて頂きます。融資交渉を終えて大きなハードルを超えたのは間違いないことではありますが、開業後の安定経営は約束されているものではないことを肝に銘じて欲しいと思います。

以下、質問します。
可能であれば、思う通りに紙に書き出してみて下さい。

1、ユニットは何台でスタートしますか?
2、最終ユニット台数は何台に設定しますか?
3、歯科衛生士は最終で何人雇用したいですか?
4、ご自身で取りたい給与はいくらですか?
5、スタッフに上げたい給与はいくらですか?
6、先生が見れる治療患者は何人ですか?


え!こんな初歩的な質問??
と思われた先生も多いのではないでしょうか?

はい、こんな初歩的な質問なのですが、これが意味のあるものとなります。

全部書き出してみて整合性を見て欲しいと思います。
ある程度意識して開業準備をしてきた先生は難なくクリアーされるかと思います。
この6項目を数値で出して整合性が取れてない先生がもしいらっしゃれば...

開業はできてもおおきな苦労が待ち構えているかも知れません。

書き出した例)
最終ユニット台数が4台、スタッフには年収400万、保険診療が軸、自分は年収3,000万のケース

考察します。
ユニット4台で保険診療が軸ですと、ある程度回転率は必要な診療スタイルとなります。
受付を専任として中のスタッフは全員DHとした場合、必要雇用人数はマストで5人。
ただ、時代の流れで有給完全消化や産休育休等を加味して考えると、受付+1,DH+1で合計7人。

1、人件費
DHのお給料を400万/年、受付のお給料を350万/年とすると、
(400*5人)+(350*2人)=2,750万
社会保険料を加味すると、医院のキャッシュアウトは、3,162万/年となります。

2、他経費
人件費以外の経費をまとめて、ざっくり月100万〜150万。(間で125万で考えます)
※これについては、土地開業、テナント開業で数値は変わってきますが、土地開業で建物を建てた場合は、減価償却費、家賃で経費でのキャッシュアウトとなるかの違いとなります。また他経費はばらつきが多いため、あくまで参考値として記載します。

3、変動費
保険診療を軸として診療をする場合の変動比率は、約22%
※変動費とは、材料費+外注技工料

上記が大枠のキャッシュアウトする項目となります。
整理します。

1、人件費 3,162万
2、他経費 125万*12ヶ月=1,500万
※変動比率=22%

3,162万+1,500万=4,662万
これが売上がなくてもキャッシュアウトするお金(固定費)です。
これに先生が欲しいという3,000万を足すと、 7,662万。

7,662万÷(1-0.22)=9,823万
必要な売上額は、約1億円となります。

???

あれ?思ったより売上必要だな〜...と思った先生もいらっしゃるのではないでしょうか?

ただ、これで終わりではありません。
計算上わかりやすく上記のようにしましたが、利益に対しての税金がかかります。
それと、利息は経費となりますが、元金は経費とならないので、元金返済もかかります。

約200,000,000円を20年(元利金等)で借り入れると、月の返済はざっくり1,000,000円です。
そのうち元金は、730,000円ぐらいからスタートし、年々増加していきます。

3,000万欲しいけど、それを考えると半分にもならないのか... 
となるわけですね。

あ!そっか!
売上が1億以上あがれば大丈夫だよな〜!!!
そう思った先生がいれば、それは非常にまずいです。


ユニットの最終台数は4台でしたよね?
考察しましょう。

保険診療が軸なわけなので、ある程度回転数は上がるとは思います。
仮に1台-10回転としましょう。(自費は水物として考えません)
そうすると、10回転×4台×21日=840人が月の総来院数となります。

これに1回あたり保険点数をかけると、
840人×850点=714,000点 ※850点は大枠イメージです

714,000点×12カ月=85,680,000円 


先ほどの計算では、9,823万でした(税金/元金返済を考えずに)
現実のMAX値で計算すると、8,568万となりました。
1,000万以上の差異が出ますね。

仮に自費が間違って1,500万出たとしましょう。
この1,500万は来年以降も継続して読める数値と言えますか?

こうなると、先生の3,000万は夢のまた夢とお気づきになるかと思います。

開業するにあたりイメージを持つのは誰しもがやるべきことですし、出来ることです。
ただ、それを検証している先生は少ないように感じます。
収支状況により、スタッフ給与を減らす。(上げない)、スタッフ数を減らす(入れない)、自分の取り分を減らす。

逃げ方はあります。
ただ、それのどれもが何かしらストレスがかかるものとなります。
小さなストレスであればまだ良いですが、取り返しのつかない状況を生むこともあります。

時代は大きく変化しています。
歯科業界も例外ではなく、先生方が社長になるハードルは上がっています。

何故か?

○人の雇用が難しくなっています。(今後ますます厳しくなると推測されます)
○歯科医院を選ぶ能力が上がっています。(患者/スタッフ共に)
○求めるレベルが上がっています。(接遇/説明/技術)


歯科医院を開業すれば勝ちの時代は、遥か昔の話です。
歯科医院が減少傾向にあり、今後開業する先生は勝ちしかない!ということは絶対にありません。
時代が大きく変化していることを頭に入れなければ、開業して1年で閉院ということにもなりかねない。

それが今です。

開業を意識したら、はじめて欲しいこと。
それは、冒頭に記載したような当たり前のことを書き出すこと。
そして、それが整合性がとれているかを確認すること。

ご自身の力量を過大評価せずに、それが成し遂げらるレベルであるか否か。
今までの経験で乗り越えられるのか、それとも上積みが必要なのか。
スタッフへの愛はあるのか?対価として満足のいく給与や福利厚生を組み立てられるのか。

様々な角度から精査しておくことをお勧めします。

倒産しづらい業界であることは間違いありません。
ただ、今後もそうとは言い切れません。
起業したからには安定経営を続けていかなければなりません。

それがないと、スタッフにも患者さんにも満足を与えることはできません。

ご自身が社長として、経営をしていく。
それは、医療を提供して事業として成り立たせることです。
開業前にある程度イメージをし精査をして、様々なパターンから自分に合うものを選択して、開業までと開業後を考えて欲しいと思います。



 

「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。

歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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