コラムColumn

2024.12.29コンサルティング

損益分岐点売上と収支分岐点売上 #違いを理解していますか?

今回は、財務的なお話をしたいと思います。
開業したばかりのケースから何十年も経営されているケースまで、どのステージの医院でも意識しなければならないのが、今日お話する損益分岐点売上を収支分岐点売上です。
経営をちょっと勉強している先生であれば、この違いはわかることと思いますが、そうでない先生は、ピンと来ない.. そんな方も多いのではないでしょういか?

それぞれについて、おさらいしてみましょう!

1、損益分岐点売上
売上と経費がちょうど釣り合って“0”になる売上高です。
計算式:固定費÷限界利益率
決算の段階で赤字にならないための売上高はいくらになのか?
これを知ってないと、試算表を出して毎月チェックしてないとすれば、最後まで黒か赤かわかないということになります。

2、収支分岐点売上
当期のキャッシュフローがちょうど釣り合って“0”になる売上高です。
計算式:固定費+(借入元金/(100%-税率)÷限界利益率
決算の段階でキャッシュがマイナスにならない売上高はいくらになるのか?
事業継続のために重要なことはキャッシュですので、損益分岐点売上高よりも重要な数値と言えるのではないでしょうか?

上記1.2について、売上高を明らかにするためには一つ条件があります。
それは、経費を変動費と固定費に分けることです。

変動費:売上と連動して増加する費用のことです。
固定費:変動費以外の経費(水道光熱費/旅費交通費/研修費/接待交際費/会費/リース料等)

費用名を見て貰えば、イメージは湧くと思います。
変動費は、売上が変動すると同じように変動するもの
固定費は、売上が変動しても基本的には変動しないもの

この分け方が出来ていないと、◯◯分岐点売上が出せないわけです。
きちんと変動費と固定費が分けられている損益計算書を「変動損益計算書」と言います。
仕事がら、沢山の医院さまの試算表・決算書等を拝見する機会があるのですが、驚くことにこの分け方が出来てない税理士事務所さんや会計事務所さんが多いんです...

決算という視点で言えば、納税額を計算するために資料を作るわけなので問題は無いのですが、戦略を組むための資料としては全く使えないものとなります。
頂いた資料を組み換えれば、もちろん変動費と固定費として分けられるのですが、一手間かかってしまいます。
問題なのは、定期的な月次の際に重要な部分が話されておらず、決算(着地)時の税金の話ばかりになっているというのも多く見受けられます。

いわゆる“財務会計”というものですね。
こういうスタイルを否定はしませんが、医院として置かれているステージが、非常に安定していて、預金も潤沢にあり、スタッフへの給与も他医院より多く払え、お金の心配は何もなく、ただ、毎期毎期税金をどう安く済ませるかがテーマの医院であれば良いと思います。

ちょっと考えてみてください。
・預金は月商の何倍ありますか?
・利益剰余金は順調に積み上がってますか?(医療法人的な考えで)
・スタッフに満足のいく給与や賞与を払えていますか?
・先々に向けてのスタッフ余りあり雇用を意識していますか?

完全に「税金を如何に少なく払うか!」だけ考えて良い医院は、ほんの一握りなのではないでしょうか?まだそのレベルに到達していない段階で、節税をしている医院さんをよく見かけますが、もう少し将来を見て進むのが宜しいかもしれません。医院の開業年数、院長のライフスタイル・ライフステージ、スタッフの年齢・雇用人数、目指すべき医院像...ご自身の置かれている立場をしっかりと抑えて、財務戦略を組むことをお勧めします。

まず、ご契約している会計事務所様が、変動損益計算書になっていない場合、先方に改変を依頼してみてください。「毎月しっかり数値を見ていきたいので。」と言っていただくと、対応して頂けると思います。弊社でも何件か医院様に変わって依頼したことがありますが、ほとんどの事務所様は対応して頂けました。テンプレートになっていて難しい... と言われた場合は、そこから変動損益計算書として改変して持ってきてください!とお伝えください。

話はずれますが、会計事務所さんの視点として、税金に重きを置いているケースが多く見られます。医院の置かれているステージ関係なく、納税額を減らす。借入金を減らす。etc...  キャッシュの積み上げが大事な時期に節税をしたら本末転倒なのにです。

例えば、500万の利益が出ることがわかり、節税のために一括償却で半分の250万を使ったとします。
*250万×(1-30%)=175万の黒字となります。

では、無駄な節税をせずに、そのまま決算を迎えたとするとどうでしょうか?
*500万×(1-30%)=350万の黒字となります。

黒字の数値は2倍違いますね?
これがジワジワと打撃を与えることになることを意識してほしいと思います。

業績が好調で今期はとにかく節税してもOK!ということであれば、上のような資金の使い方は良いでしょう。ただ、まだまだ資金的に安定期に入っていない状態で過度な節税をすると、現金の残りは1/2になってしまうのです。
永続的により良い歯科医療を提供していくためには、お金はあるに越したことはありません。もちろん、銀行さんから都度借入するというのも一つの方法です。

ただ、キャッシュの積み上がりが妥当なバランスになっていない歯科医院には、良い条件での融資はありません。歯科業態は厳しいという見方をする銀行さんも多くなってきていますので、極力現金をストックする意識を持って欲しいと思います。

話を元に戻します。

損益分岐点売上でまずは目指すべき売上を得る。
そして、収支分岐点売上で本来目指すべき売上を知る。
この2ステップが重要だと思います。

例)固定費 5,000万 / 借入金返済 1,500万 / 限界利益率 80%の医院があったとします。
それぞれ計算式に当てはめると以下が必要売上となります。

◯損益分岐点売上:6,250万
計算式:固定費 5,000万 ÷ 限界利益率 80%

◯収支分岐点売上:7,563万
計算式:固定費 5,000万 +(借入元金 1,500万/(100%-税率 30とする)÷限界利益率

1,313万の差が出ました。
決算上は6,250万だと損益トントンですが、キャッシュフローで見ると、1.313万の減となります。仮にこの売上規模のまま、5年経過したらどうでしょうか?

毎年1,313万のキャッシュが減となり、5年で6,565万のキャッシュ減となります。
預金が潤沢にあれば倒産はしませんが、そうで無い場合は...
考えるだけでもゾッとしますよね..

医院経営をしていく上で、見るべき指標は山ほどあります。ですが、一番重要なのはまずは現金預金。これをしっかりと積み上げる意識を持つことだと思います。そして、戦略を組むために必須である、損益分岐点売上と収支分岐点売上を頭に入れる、叩き込むこと。

それが出来て初めて、医院経営の入り口に立つものではないかと思います。
今一度、自院の試算表/決算書を見て数値を分析してみてはいかがでしょうか?



「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。

歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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