コラムColumn

2022.01.30開業支援

開業までの道 #融資交渉にむけて(2)

先月のコラムで融資交渉(1)として必要費用について書かせて頂きました。
今回は続きとして、開業時に実際にかかってくる費用(建築・土地・器材・準備費・運転資金等)について書いてみたいと思います。

先月のコラムはこちら

1、土地について
土地の選定は一番骨が折れる要素となります。
医院理念・ブランディングが固まってる前提で土地探しを行うわけですが、
なかなか希望する土地が見つからないと言うのがここ最近思う部分です。

サイズは300坪をベースとして考えます。(北国の例)
※300坪の根拠としては以下のものが挙げられます。
1、駐車スペース:スタッフの車 8台 患者さんの車 12台 計20台
2、冬場の排雪場所の確保:敷地内に寄せるスペースが必要
3、建築サイズ:ミーティングルーム/スタッフルームの充実・動線分離での設計・拡張スペースの確保


300坪程度の土地があれば、建築物も駐車場も余裕を持った形で配置することが可能となります。
また、図面の段階で将来の拡張をイメージしておけば、ユニット増設等での拡張もスマートになります。
※価格は開業を希望する地域により大きく変わってきます。

坪単価 10万であれば、購入費用は3,000万円
坪単価 20万であれば、購入費用は6,000万円
坪単価 30万であれば、購入費用は9,000万円


開業にかかる経費の中で一番振り幅が大きいのが土地です。
ご自身の理念やブランディングに合う土地を妥協せずに探すことがポイントとなります。

2、建築について
土地が決まれば次は設計・建築の部分を定めていくことになります。
建築は平面→立面と進んでいき、非常に打ち合わせに時間がかかる部分となります。

最近の傾向ですと、大体60坪〜80坪程度のサイズで建てるケースが多いように思います。
よくある質問として、

「坪単価はいくらですか?」

というのがあるのですが、坪単価は全て計算したあとの結果値です。
建築の坪数が小さければ高くなり、大きくなれば低くなる傾向があります。
また、新型コロナの影響により部材が高騰・入荷遅延しているのが現状です。
※過去(ここ数年)にご開業された先生の時から見ると、1.2倍程度単価が上がってくるものとして見ておく必要があります。

ざっくり必要費用を出すと、
 6,000万〜1億の費用がかかってくると見ておくのが宜しいかと思います。
坪単価で言うと、75万〜125万(あくまで概算値)となります。


3、器材について
器材は、振り幅が比較的小さい項目となります。
最近は導入必須の器材が増加してることもあり、費用は以前よりかかる傾向となっています。

必須導入器材:ユニット・CT・カウンセリングシステム・カルテコン・滅菌室器材・機械室
検討優先器材:感染対策系器材(口腔外バキューム・メディカルライトエアー・クラスBオートクレーブ等)
検討器材:セレック・iTERO・マイクロスコープ・レーザー・予約システム・自動精算機等


器材の選定については、必須なものと欲しいもので振り分けて考えることが重要です。
欲しい器材を全て導入できる資金(自己資金)があればよいですが、まずはミニマムで考えてみましょう。
※明らかに1.2年後に使用することが見えている場合は初期に組み込むのもありです。

ここ最近の傾向ですと、器材にかかる費用は約5,000万程度となります。

ここまでが、ご開業にかかる3大費用となります。
ミニマム:土地-3,000万 建築-6,000万 器材-5,000万 計14,000万

※土地は地域により差が出ますが、建築・器材については地域差異はほぼありませんので、
建築+器材=1.1億〜1.5億 として大枠見ておくのが宜しいかと思います。
設計士を入れるかどうか・または建築会社により費用は変わりますので、何社かで入札と言う方法もありです。

3大費用だけでもある程度の費用がかかりますね。
しかし、これで完了! ではありません。
開業準備費・運転資金の2項目を忘れてはいけませんね!

4、準備費について
準備費については、弊社では大きく2つに分けて考えます。

・土地・建物に紐づく税金関係
・歯科医師会入会金・内覧会・セキュリティ・院内設備・AV関係・OA機器関係


”土地・建物に紐づく税金関係”について
土地)固定資産税清算金・不動産売買契約書印紙代・仲介手数料・登記料・不動産取得税等
建物)建物工事請負契約書印紙代・登記料・不動産取得税・固定資産税等
土地・建物を取得した際にかかる費用がありますので、この辺りも抜かりなく計画に組み込む必要があります。

”歯科医師会入会金・内覧会・セキュリティ・院内設備・AV関係・OA機器関係”について
ここは、上記に含まれない項目で必ずかかる費用となります。

地方開業であれば、歯科医師会への入会がほぼマストとなります。(地域によるが200万前後が多い)
患者流入の施策として、内覧会の開催も欠かせません。
他、建築費用に含まれない部分(カーテン・待合室の椅子/テーブル・スタッフルームの家電関係等)がまずは必須。
また電話器・コピー機等の機器、医院セキュリティも必須となります。

大枠 約1,000万

これらを準備費用として枠を取ることが重要となります。
この枠を取らずに計画を立てると、運転資金から流用する形となり事業としてスタートするのが心許ない状況となります。

5、運転資金について
最後の項目となります。
事業が軌道に乗るまでの費用である”運転資金”です。
歯科の収支構造として挙げられるのは、入金が2ヶ月後であるということ。
開業月の翌々月に初めての入金があります。(窓口入金は除く)

スタッフの開業前給与、開業から2ヶ月の給与、経営陣の給与、各所への支払い etc...
入金になる前に支払いが先行することでキャッシュは目減りしていきます。
開業から3ヶ月〜半年程度はどんどんキャッシュは減少していきます。

メンタル的にキツいですよね。。。

それを補うために必要なのが、運転資金となります。
できれば1,500万円程度を確保してスタートするのが望ましいです。
最低でも1,000万は持ちたいところです。

まとめます。

1、土地 300坪(地域により価格差異が大きい)
2、建築 60~80坪(6,000万~1億)
3、器材 約5,000万
4、開業準備費 約1,000万
5、運転資金  約1,500万


1、土地は、地域差異が大きい
2〜5の項目で、1,35億〜1.75億
※あくまで概算として記載してますのでご了承ください。

例1)<融資1.8億の融資を受けた場合の返済例>
※土地を含めた総費用で2億 自己資金 2,000万 
※金利 1.0%  元利均等  据置期間 12ヶ月 返済年数 20年として試算
 

初期12ヶ月の返済額 月の返済額 150,000円(据置期間12ヶ月 利息のみ)

2年目以降の返済額 月の返済額 867,175円(利息+元金)

例2)<融資1.2億の融資を受けた場合の返済例>

※土地を含めた総費用で1.6億 自己資金 4,000万 
※金利 1.0%  元利均等  据置期間 12ヶ月 返済年数 20年として試算
 

初期12ヶ月の返済額 月の返済額 100,000円(据置期間12ヶ月 利息のみ)

2年目以降の返済額 月の返済額 578,116円(利息+元金)

上記2例を返済のイメージとして見て頂ければと思います。
借りれたはいいが、返済は可能なのか?
ご自身の売上イメージと照らし合わせて、借入額のMAX値を決める必要性があります。

借り入れが出来る額と返済出来る額は違います。
バランスをしっかり見てください。
周到な準備で、融資交渉に臨みましょう!

 

「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。

歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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