賞与の考え方 #業績連動で支給する意義
今回はスタッフさんに支給する賞与について書いていきたいと思います。
医院の多くは年2回、夏と冬に賞与を支給する形が多いかと思います。
突然ですが、質問です。
Q,先生の医院では賞与はどれぐらい支給していますか?
ごくごく自然な質問かと思いますので答えてみてください。
そもそも賞与とは?
国税庁の定義では
「定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するもの」
となるようです。
賞与は法律上支払わなければならない義務はないので、
「うちは賞与はありません!」
でも有りは有りです。
ですが、スタッフのモチベーションを考えると、
”賞与なし”は避けて通らなければならない部分かと思います。
スタッフ雇用にも大きく響いてきます。
では話を本筋に戻します。
先程の質問の答えに戻りたいと思います。
Q,先生の医院では賞与はどれぐらい支給していますか?
A1,うちの医院は年2回で3.5ヶ月払っているよ!
A2,うちの医院は賞与を出すほどキャッシュが残らないんだよね。。
A3,去年は出せたけど今年は厳しいから銀行から借り入れなきゃ…
上記のような返答になった先生は、このコラムを是非最後までお読み頂ければと思います。
A1と答えた先生。
一般企業と同じような考え方で支給をされているので素晴らしいことだと思います。
が、支給総額がどんぶりになってませんか?
根拠ある計算で◯ヶ月となってますか?
ただ、なんとなく◯ヶ月となっていませんか?
A2と答えた先生
賞与は支払えないですよね。。
そもそもの医院経営を考えなければいけませんね。
人員過多なのか?そもそも売上が少ないのか?
賞与の前に健全な経営状態に戻すことが最優先事項となります。
A3と答えた先生
去年は自費がポンポン入って利益が出たから大盤振る舞い。
今年はコロナの影響で先行き不安もあり、自費の成約が減り減益。
賞与を出すキャッシュが残っていない。
昨年の支給額と極力合わせるために銀行借り入れということかと思います。
これは、本来の形ではありませんね。
A2.A3の先生は、経営をしっかり立て直すことに尽力が第一です。
勿論頑張ってくれたスタッフに還元したい気持ちはわかりますが、
医院の状況がそういった状態ではないということですので、早急な立て直しが必須となります。
A1と答えた先生は、業績も良く他院よりも患者さんも入っているのではないかと思います。
地域では、”流行っている”と言われるケースが多いのではないでしょうか?
ですが、根拠なしの賞与◯ヶ月支給はちょっと考えものです。
財務諸表をしっかりみた上で支給額を確定し、結果的に◯ヶ月であれば何も問題はないですし、結果論で賞与◯ヶ月ということになります。
問題なのは、財務諸表やキャッシュフローを見ないで、ただ闇雲に◯ヶ月として賞与を支給している先生です。
賞与支給の考え方
弊社で考える賞与支給額は、業務連動型で弾き出す方法です。
半期の財務諸表数値から、それぞれ夏と冬の賞与枠を確定させ、貢献度により振り分ける考え方となります。
例)半期売上が3,600万の医院 夏の賞与(個人事業)
売上(11月〜4月累計) 36,000,000円
変動費 7,500,000円
*医院の人件費率枠 40%
(他経費のバランスと目標利益により策定)ここが重要です。
※冬の賞与は、5月〜10月を基礎とします。
人件費内訳)
1、スタッフ給与合計 7,200,000円
2、福利厚生費 500,000
3、法定福利費 900,000
4、院長給与分 3,600,000 (医療法人の考え方を採用します)
医院として定めた人件費率は40%なので、
半期の人件費額は、 36,000,000×0.4=14,400,000円 となります。
スタッフにかかる費用 8,600,000円(上記1+2+3)
院長の取り分(給与) 3,600,000円(上記4)
合計 12,200,000円
賞与支給枠 14,400,000- 12,200,000=2,200,000円
半期の状態からスタッフに支払える賞与の合計は、220万円となります。
仮にスタッフが6名であれば、36.6万円/人です。
これを貢献度や評価シート等があれば、その評価から足し算引き算してそれぞれに支給するという形になります。
※社会保険等もかかりますので、その辺りは差し引いて考えます
勿論、昨年とのバランスを見て全額支給でなくても構いません。
その場合は、ストックして次の賞与に備えるか、設備投資の元金とするのが望ましいです。
また逆に、昨年とのバランスを見て先生のポケットからドラえもん的に出してあげるケースでも良いかと思います。
重要なのは、自院の人件費率を何%に定めるかです。(労働分配率でも良いです)
これを定めるためには、他経費と目標とする利益の数値を見なければなりません。
他経費や残したい利益を見ずに人件費率は決められないですからね。
その結果が、基本給の◯ヶ月分ということであればOKということになります。
ひとつ抑えておきたいのは、人件費は削ってはならないという事。
歯科医院はソフト(人)ありきの業態です。
責任ある仕事で忙しい職場でありますが、その割に給与は高くないというのが現状かと思います。
一般企業と比較しても負けない福利厚生とお給料を実現出来れば、
その医院は永続的に繁栄していく可能性が高いと言えます。
歯科衛生士であれば、年収400万。
歯科助手や受付であっても年収300万。
一般企業よりもお給料が良く、誇れる仕事をして、やりがいを与えてくれる医院に勤めたいと思うのは、当たり前の事だろうと思います。
スタッフに選ばれる医院になるためにも、医療を真摯に提供し収益力を上げ、財務力をつけていくことが非常に大きなポイントとなります。
この先、材料や消耗品・器材等の物価上昇は避けられない情勢です。
すでに材料消耗品の高騰は耳にしておりますし、器材の価格上昇も関係各所から情報を頂いております。
賃金上昇率はいまのところ横ばいとなっていますが、将来はわかりません。
今からそこを見据えて、力を蓄えるのが得策かと思います。
「変動費の上昇・消耗品器材の上昇・器材の上昇。」
数パーセント単位でのキャッシュアウトが予測されます。
収支の状態をしっかり把握した上で、賞与支給して欲しいと思いますし、
いつまでも賞与を出し続けることができる体制(体力)を創り上げて欲しいと思います。
脱線しましたが、結論です。
ハローワーク等での記載方法が◯ヶ月なので、そういった出し方になるのはわかります。
肝は内容を把握しての◯ヶ月かどうかということです。
”賞与は業績連動で検討するもの”
それにより、医院の本来の力が見えてくるはずです。
今一度、賞与支給額について根本から見つめ直してみるのも宜しいのではないでしょうか?
「たかが数値。されど数値。」
医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢