コラムColumn

2022.05.31コンサルティング

人件費率  #適正と言われる比率に縛られていませんか?

今回は人件費について書いていきたいと思います。

最近ご相談を受けるなかで、非常に多い内容が”人件費”についてです。
 

Q,うちの人件費率は適正でしょうか?

Q,今の人件費だと売上はどれぐらいが適正でしょうか?

Q,事業を拡大したいんだけど、人件費はあげたくないんです…
 

などなど、”人”にかかる費用についてのご相談が多々あります。
 

結論から言います。
 

「適正な人件費率は、医院ごとに異なる」
 

です。
 

まず最初に! 


 

Q,そもそも人件費ってなんなのでしょうか?


 

A, スタッフにかける給与!


 

正解ですね。
 

ただ、給与だけを人件費として見るのはちょっと違います。

医院側で負担している【法定福利費・福利厚生費・賞与】も含めて人件費となります。


 

人件費と労働分配率の違いは?


 

よく聞く言葉に上記の2つがあると思います。

では、それぞれの違いはなんなのでしょうか?


 

人件費>>>

売上に対する人件費の割合

例)売上8,000万 人件費 2,600万


 

2,600÷8,000×100=32.5%


 

労働分配率>>>

売上総利益(付加価値)に対する人件費の割合

例)売上 8,000万 売上総利益 6,,240万 人件費 2,600万


 

2,600÷6,240×100=41.7%


 

上記のような形となります。


 

”人”にかけるお金(給与)は売上総利益(付加価値)から出るものです。

歯科業態の場合は、毎月の売上総利益(付加価値)はある程度決まってきますので、

売上総利益に対して何%を”人にかける”とするかがスマートな方法となります。


 

それが定まれば、売上に対する人件費率は自動的に確定するということですね。


 

※上記の計算は個人事業としての歯科医院をイメージしています。

医療法人ですと、院長の給与(報酬)も含めて”人”にかかるお金として見ますので、人件費率・労働分配率の割合は大きく変わってきます。


 

人件費の適正値は?

歯科の人件費率は、20%~25%が適正と言われることが多いと思います。

一般論で言えば勿論正しく、間違いのない数値だと思います。

この辺りの割合で売上も確保できれば、非常に嬉しいと思うのが経営者側ではないでしょうか。


 

本題に入ります。


 

ではなぜ、医院ごとに異なるのか?

指標として20~25%を頭に入れておくのは良いことですし、同業の指標とどこが違うのか知っておくという意味では無視出来ない数値であることは間違いありません。


 

その前提で、以下の4つが医院ごとに違うという点が挙げられます。


 

1、医院が成長段階にあるか衰退段階にあるか

2、変動費率がどれぐらいあるか

3、その他の経費がどれぐらいあるか

4、目標営業利益をどこに定めているか


 

1、医院が成長段階にあるか衰退段階にあるか

医院のライフステージごとに考えていくことが重要です。

成長期にある医院は人雇用も活発になるため、先行して人件費率は高めになる傾向があります。

その分、売上を伸ばすことで人件費率は下がっていきます。


 

衰退期にある医院は売上が減少傾向になるので、人を切らずに雇用し続ければ人件費率は上昇し、売上に見あった形で人を削減していけば人件費率は下がります。


 

2、変動費率がどれぐらいあるか

歯科業態の平均的な変動費率は、21~22%になります。
※変動費は、外注技工料・歯科材料を合算したものとなります。
自費が多い医院ですと25~30%となるケースもあります。


人件費率は、売上に対して何%かという計算式になるので、

売上からの最初のキャッシュアウトである変動費率がどれぐらいかは、無視出来ない数値となります。先に記載しましたが、変動費を引いた売上総利益(付加価値)の何%を人件費とするかから逆算して人件費を出すのが望ましい理由はここにあります。


 

3、その他の経費がどれぐらいあるか

ここもとても重要です。


 

例えば、同じ売上の医院があると仮定します。

売上8,000万 売上総利益 6,240万 


 

A医院はその他の経費率-25% 

B医院はその他の経費率-18%  


 

7%の違いがあります。


 

これを一旦無視して、人件費率を25%に設定した場合、

A医院・B医院ともに 2,000万が人件費となります。


 

A医院の全貌

売上-8,000万

変動費-1,760万

売上総利益-6,240万


 

人件費-2,000万

その他の経費-2,000万

営業利益=2,240万


 

B医院の全貌

売上-8,000万

変動費-1,760万

売上総利益-6,240万


 

人件費-2,000万

その他の経費-1,440万

営業利益=2,800万


 

営業利益として、560万の差異が発生します。


 

営業利益の中から、元本返済・納税等を行い、残りが経営者の取り分となります。

目標営業利益が定まっての上記内容であれば問題ありませんが、その他の経費を無視して人件費率を定めるのはナンセンスだとお解り頂けると思います。


 

4、目標営業利益をどこに定めているか

営業利益は、売上から全ての経費を差し引いた額となります。

3、で記載した元本の返済や税金等・生活費を加味して、目標営業利益を定めることが重要です。

中には、目標営業利益を全く定めずに事業を営んでいる歯科医院もあるかと思いますが、それでは全ての数値がデタラメとなり、事業として成り立つものでなくなってしまいます。


 

人件費率の設定は

【自院の現在のステージ・変動費やその他の経費の額/率・目標利益からの逆算】を加味して策定する必要があるということになります。


 

人件費率だけに目を奪われていては、適切な人への投資は出来ません。

人への投資ができなければ事業を拡大することも出来ません。

歯科医院は基本的にはマンパワーありきで売上総利益(付加価値)を生み出す業種ですので、

全体的なバランスを考慮して、自院の適正人件費率を定めるのが宜しいと思います。


 

指標はあくまで指標として

明らかに逸脱している項目については、精査・改善が必要

スタッフに還元することで生まれる付加価値であることを忘れずに


 

自院のステージに沿った人件費率を、ステージごとに策定してみてはいかがでしょうか?


 

「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。

歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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