粗利益の重要性 #売上目標達成が全てか?
今回は粗利益の重要性について書いていきたいと思います。
まず最初に、そもそも粗利益とは何か?
”売上から出る最初の経費(原価)”のことです。
歯科で言うと、以下の2点がそれにあたります。
粗利益は、会計用語で「売上総利益」と言います。
1、外注技工料
2、材料・消耗品費
上の2つを合わせて変動費と言います。
売上に比例して変わるものなので、変動費というわけです。
これがわからないと、この先読み進めるのが難しいので、まずは頭に入れて頂ければと思います。
簡単に言うと、売上を上げるために仕入れたものということになります。
粗利益=売上-変動費 です。
一般的には、歯科業態の粗利益は21~22%前後となっています。
※2022 弊社クライアント様平均値より
一昔前は18%程度が平均値となっていましたが、ここ最近は上昇傾向にあります。
理由としては、まず第一にメタル(特にパラ)の高騰が挙げられます。
1袋30gで100,000円前後と非常に高価なものとなっています。
20年ぐらい昔は、1袋で10,000円を切るレベルだったものが今では10倍です。
そう考えると、とても恐ろしいですね。。
次に挙げられるのが、材料単価の高騰です。
コロナや世情の変化により、材料にも価格上昇の波が押し寄せてきています。
ユニット等の大物器材に関しては15%程度の価格上昇があり、器材によっては50%程度価格上昇しているものもあると聞いています。
仕入は安いに越しことはありません。
ですが、高いからと言って買わないわけにはいきません。
では、外注技工料はどうでしょうか?
今現在大幅な価格上昇は耳にしておりませんが、この先は間違いなく納入価は上昇傾向となることが予測されます。
理由としては2つ。
1つ目は、歯科技工士(所)の過度な不足です。
以前は歯科医院に技工所さんが仕事を取りに回っていたものですが、現在は歯科医院側から頼んでも断られることもある時代となっています。ビジネスパートナーとして技工所さんを捉える意識がないと蹴られるということもあるということです。今までとは逆で、技工士さんにイニシアチブがあるのですから当然のことですよね。歯科衛生士の売り手市場と類似してきているような気がしています。
2つ目は、歯科医院と同じく材料の高騰です。
技工所さんも補綴物の製作のためには仕入れが発生します。
この費用が上昇すれば、歯科医院への納入価も高くなるわけです。
ここで、納入価を下げるためにクオリティを下げる方向に舵を切るのは本末転倒です。
今の世の中は、品質の時代。
高いクオリティを担保して、患者さまに提供することが価値となります。
要は高い価値を提供するための仕入はケチることができないということです。
粗利益から出る(キャッシュアウトする)もの
まず第一に挙げられるのが、人件費ではないでしょうか?
医院経営をしていく上で必要不可欠且つ最重要な位置付けのものだと思います。
経費の中で一番かかるものとなりますが、至極当然の部分です。
ここはケチると自分に降りかかって返ってきますので、意識して欲しいところです。
人件費以外の経費は、その他の経費として考えることが多いです。
水道光熱費、広告戦略費・旅費交通費、接待交際費、保険料、リース料、etc....
これらを、人件費を含めて”固定費”といいます。
固定費はその名の通り、売上によって変動しないものです。
例えばお給料。
「今月は売上が少ないから、ごめん3万下げるね!」
間違いなくスタッフさん辞めますね。。
その前に労働基準法上、あり得ない話となります。
個人事業で事業を行っている先生方は、1月からまた新たな期のスタートとなります。
ほとんどの医院で売上目標を立てていると思います。
ですが、粗利目標はどうでしょうか?
自院の粗利率を理解した上で、売上目標を立てられていれば問題なし。
問題なのは、自院の粗利率を知らずして売上目標を立てることです。
これでは、中身がスカスカの見栄えのみの目標となってしまいます。
例えるなら、意味もなく「売上目標1億円!」 といった感じですかね(苦笑)
年商1億円は全国の歯科医院の8%程度となっており、見栄えは非常にいいです。
ですが、売上が高いことが、全て素晴らしいとは言えません。
売上が8,000万でもスタッフさんへの還元や福利厚生が良い医院もありますし、6,000万でも内部留保とスタッフ雇用にお金をかけれる医院もあります。
1億円は結果論。
かかる経費や内部留保を考えて粗利をたてて、その結果変動費率を考えると目標1億!
これであれば、全然OKです。
話が逸れましたので戻します。
1、民間企業と同等の福利厚生を実現
2、有給休暇の完全取得を実現
上の2つがこれから必須の部分だと思っています。
一般企業は基本的に社会保険完備です。
企業側がお金を出すことにより、保証が手厚くなっています。
働く側は、将来の年金受給額が国民年金よりも多くなることが大きなメリットとなります。
※将来の日本がどうなるかは現段階で不透明なので、そこは置いておきます。
有給休暇の完全取得も実現しなければいけない項目です。
一般企業でも完全取得できる企業はまだ多くはありませんが、歯科業態はまだまだ弱い部分です。
ですが、世の中の移り変わりやライフスタイルの変化・意識の変化により、有給取得は当たり前の時代となりました。
1、を実現するためには、社会保険料負担で給与額面+15%程度の費用がかかります。
2、を実現するためには、余りあり雇用として列を潰さないマンパワーの実現が求められます。
先に記載した、材料消耗品・外注技工料等の価格上昇に加え、電気代高騰による水道光熱費の上昇等がある中で、必要な人材を余りありで雇用する体力が必要なわけです。
今すでにそういった取り組みをされている医院さまは素晴らしいと思います。
これからその後を追って、上記のような取り組みを行い強固な医院を構築していきたい医院さまは、粗利がいくら必要なのか、しっかり考える必要があります。
かかる経費を知り、この先のビジョンを立て、必要な粗利を弾き出した上で、変動費率をかけて目標売上を算出する。これが、今からでもやるべきことだと思います。
導入期の医院、成長期の医院、安定期の医院、衰退期の医院。
それぞれ今いるステージによって考え方も変わりますが、本質は同じです。
これからまだまだ医院を大きくして、地域貢献を目指す医院さまは特に意識して欲しい部分です。
よくあるのが、”税金を最小限にしたいから一発償却枠を最大限使う”ことではないでしょうか?
税金額はもちろん減少しますが、手残りももちろん減少します。
節税がNGとは言いませんが、様々な角度から見て考える必要があるということです。
一番お金が残るのは、最大限税金を払うこと。
※これは賛否あるので、あくまでも考え方の一つとして聞いてください。
医院経営はキャッシュが無くなった段階でTHE ENDです。
また、スタッフにも勤めて良かった!勤めたい!と思われる医院じゃないと、先は明るくありません。自院のスタッフ(社員)の満足度を上げ、医院体力をしっかりとつけることで、その先の患者さまに対して適切な歯科医療を提供できるのではないでしょうか?
粗利がいくら必要か?
無視しては通れない部分だと思いますので、この機会に考えてみては如何でしょうか。
「たかが数値。されど数値。」
医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢