コラムColumn

2024.06.28コンサルティング

利益ごとに見る経営判断 #各利益の意味を理解していますか?

今回は“利益”をテーマとして書き進めていきたいと思います。
医院経営は簡単だ!財務諸表も読めるし問題なしという先生もいらっしゃるかと思います。
逆に、経営は難しい.. 経営ってよくわからない... という先生も多くいらっしゃるのではないかと思います。

経営。
いろんなセミナーがあり、指南書があり、テンプレがあり...
なにが正解で何が不正解かは結果論でしかない部分が多いように思います。
経営に悩み、経営に苦しみ、それが歯科医療提供の本質をも惑わせてしまう。
医療提供と表裏一体となっている、それが経営です。

まず基本的な部分からおさらいしたいと思います。
利益には5つの利益が存在します。

1、売上総利益(粗利)
2、営業利益(医業利益)
3、経常利益
4、税引前当期純利益
5、当期純利益

この段階で頭が痛くなる先生もいらっしゃるかもしれませんが、もう少し読み進めてください。

先生方が、「黒字だ! 赤字だ... 」とお話しするのはどこの利益ですか?

大抵の先生は、会計事務所様や税理事務所様から期末後にでる決算書の、当期純利益を指していることが多いように思います。
勿論間違いではないですし、最終の利益として非常に重要であるという認識で合っています。

または毎月の試算表を見て、控除前所得が赤字だ黒字だと話す先生もいらっしゃるかもしれません。
※個人事業主と医療法人で試算表の内容は変わりますので、今回は個人事業を軸としてお話を進めていきます。

毎月の試算表を見て、医院の財務状況を把握している先生は、意外と少ないかなと思っています。
勿論目を通してはいるのですが、見方がよくわからないという理由で、サラっと流してしますケースも多くお見かけします。
細かい部分まではわからずとも、ポイントとなる部分は注視して、意識してみることが重要です。

まずは基本的な流れをお伝えします。

一つ目は、売上総利益はいくらか?(額と%)
これは、売上に比例して増加する費用である変動費を引いた最初の利益という位置付けです。

歯科医院の変動費は、材料費+薬品仕入+外注技工料となります。
売上に比例して、減少または増加すると言う意味では難しいものではありません。

歯科医院の平均的な変動比率は、21%前後です。(弊社クライアント様 2023DATAより)
※自費が多い医院は、コンテンツによりますが、変動費は高くなる傾向が見られ、25~30%程度の医院もあります。
また、メンテが多い医院は、補綴や治療材料にそんなにキャッシュアウトしないので、17%前後という医院もあります。

ポイントとしては、自院がどういったスタイルの医院か!です。
自費が10%もなく保険診療がベースの医院であれば、21%前後で収まっているかを見る。
インプラントや矯正治療で自費率が30%を超える医院は、25~30%で収まっているかを見る。

他にも、医院の色を加味する必要性はありますが、大枠で言えばそういう見方になります。
ここで明らかに逸脱した数値差異がある場合は、なにが圧迫しているのか精査してみるのが宜しいです。
そこから変動費を下げるために改善できることは何かを突き詰めていくことをお勧めします。

2つ目は、営業利益(医業利益)です。
経営の本等を見ると必ず書いているのが、営業利益=本業の利益となります。
経営をしていく上で、一番重要な利益と言えます。

これは、売上から変動費を引いた売上総利益から、経費を引いた利益となります。
経費の中身としては、項目は多数あるのですが、大きくは人件費と他経費となります。
人件費も他経費も医院経営を行なっていく上で欠かせないものであると同時に、一番頭を悩ます部分でもあります。

この営業利益の段階で赤字であれば、医業として成り立っていないと言えます。
その下に位置する営業外損益、さらにその下の特別損益がプラスとならない限り、黒字に転換はしません。
仮に営業外損益や特別損益でプラスになり黒字になったとしても、本業は赤字なわけなので改善は必須となります。

3、経常利益
4、税引前当期純利益
5、当期純利益

これについては、勿論無下ににはできませんが、強く意識するものではないと考えています。
何よりも重要なのは本業の利益である“営業利益”です。
試算表を見る際は、一番下の控除前所得の前に営業利益を確認して頂くことをお勧めします。

*営業利益がプラスでも経常利益が著しく減少して黒字ギリギリまたは赤字に転落する場合*
このケースは、借入額が過多の場合に見られるパターンとなります。
営業利益の下に営業外収益と営業外損益があり、その中には、借入金の支払利息が入ってきます。

営業利益から著しくマイナスになる場合は、この利息があることにより利益を圧迫していると言えます。
逆に言えば、この営業利益では足りないということになります。

さらに売上を上積みして売上総利益(粗利)を高める、または経費の無駄を見直す等の取り組みが必要です。

また、経費の中には減価償却費という項目があります。
これは、キャッシュアウトしない経費となるので、実際のお金の状態とは差異が表れる要因となります。

どう言う意味か?
経費には計上されているので数値上の利益は減少するが、実際にこの額がキャッシュとして出ていっているものではないので、その分のお金は手元に残るということです。
これを理解していないと、利益はあまり出てないけどお金は潤沢にあるな〜!と勘違いして、税金等の支出に備えずに使ってしまう。。。
気づいた時には、時すでに遅し。となってしまいます。

決算の際に減価償却費がどれぐらいなのかは、必ずチェックしましょう。

また、勘違いされている先生も多いのが、元金返済です。
え!と思う先生もいらっしゃると思いますが、意外と元金返済も経費計上していると思っている先生がいらっしゃいます。
元金は利益から返済します。ですので、控除前所得からその分を差し引いてみる癖をつけて欲しいと思います。

また、控除前所得から税金も引かれて最終の利益が確定することもお忘れなく。

まとめます。
利益には5つの利益があり、重要視するのは営業利益(医業利益)です。
ここのバランスが悪い場合は、何が原因なのか突き詰める必要があります。
医院のステージにもよりますが、開業から5年程度経つと安定してくるケースが多いようです。

改善点の例としては、
1、人件費が適正か?
人件費を削減すると言う意味ではありません。、雇用しておいる人数と売上のバランスが合っているかが肝です。

2、他経費に無駄はないか?
税金を納めたくないがために、過度に経費計上している先生は当てはまりませんが、本来不必要な経費は削減が必須です。

3、目指すところと現在地から未来をイメージできるか?
今より来年、来年より3年後、明らかにプラスに向かうための経費であればそこは目を瞑るということでも良いかと思います。

粗利益をこれ以上上げることが出来ないと推測される場合は、経費の見直しは必須。
または、新たな治療コンテンツの導入やスタッフ(院長も含め)のレベルアップが必要です。

国民皆保険があると言えども、現在の日本は今後の先行きが不透明で読みづらい状況にあります。賃金上昇、物価上昇がジャブのように効いてきて、経営を軽んじている医院には先々明るい未来は見えないのではないかなと思います。ただ、経営に傾倒しすぎるのではなく、適切な医療提供を全うしつつ、改善できる点は着手し改善する。数値から見えるマイナス面は、早めに策を打つことが宜しいかと思います。

営業利益。
繰り返しになりますが、意識して安定経営を継続していきましょう。
日々の患者動向からも大きなヒントを得ることが出来ますので、やれることをしっかりとやっていきましょう。




「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。

歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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