開業を決めたなら #忙しいという言葉は捨てましょう

今回は開業に向けての心構えについて書いていきたいと思います。
ある程度の経験を積むと、“開業”という言葉が頭の中に浮かんでくることと思います。
その段階から、気持ちを切り替えれるか否かが、開業後に結果として表れてきます。
開業に向かう道のりは、想像よりも遥かに多く“やること”があります。
土地探し(テナント探し)、事業計画作成、建築設計、器材選定、広告戦略、スタッフ求人、内覧会...
一般的な大きな流れは上記となります。上に挙げたそれぞれをまずはしっかりこなす必要があります。
それと並行して以下の内容を整えていく必要があります。
・自院のブランディング構築
・提供する治療コンテンツの打ち出し
・未来の医院像(提供する軸の治療や規模等)
・欲する人材(経験値優先か人柄優先か等)
・マーケティング全般(SNSでの発信等)
・雇用後1ヶ月間の教育プログラム
・雇用したスタッフへの理念の落とし込み
ざっと挙げてもこれぐらい並行して考えなければならないことがあります。
これらの工程を経て開業というスタート地点に立つことになります。ここまでの段階で、「大変そう... 自信がないな...」と思われた先生は、開業に向かうにはまだ早いかもしれません。
覚えておいて欲しいのは、開業というのは、事業を起こすということです。
事業を起こすということは、失敗は許されないということと、後戻りできないということです。
歯科医院を開業するには、多額の融資を受けなければなりません。(親御さんのサポートがある場合はそこのリスクは大幅に軽減しますが、考え方は一緒です)
歯科業界は今、大きな変化の渦の中にあります。
団塊世代の先生方の引退等により、歯科医院数は減少の時代に突入しました。人口は以前から言われているように、今後大きく減少していく時代です。地域によっては、20年先には歯科医院数が半分以下になると推測される地域も多くあります。見方によってはブルーオーシャンと言えるかもしれません。
ただ、世の中そんなに甘くはありません。
一般の方のデンタルIQの向上、SNSの発展による探す能力の向上、歯科医院選択能力は大きく上がっています。数が減れば、均等に患者さんを振り分けてもらえるであろうという考えは通用しません。今までと変わらず一定数の混んでいる歯科医院とその他の混まない歯科医院の差が大きく拡がると考えるのが正しい考え方になります。
昔はどこの医院も混んでたでしょ!?
そうかもしれません。でもそれは、予防という概念が無かった時代であり、デンタルIQも低く、どこの医院に行っても削った被せた、抜いた入れたで通った時代だからです。歯科衛生士がいない医院も多くあり、メインテナンスという概念が浸透していないこともあり、治療が歯科医療のエース兼4番バッターだったからに他なりません。
先ほども書きましたが、開業というのは事業を起こすということです。
高い技術を持っていれば成功するというわけではありません。さまざまな事柄を多角的に見て、会社としてどういう会社になりたいか、社員に対して何を求め、それに対しての対価をどういうふうにしていくか。提供するサービスのクオリティはどうするか、提供できるメニューはこれでいいか、etc... 事業継続のために考えることは無限にあります。
それらを考える時間が、開業をイメージしてから開業に至るまでの期間となります。
一般的には、開業の2年前ぐらいから進めていくのが望ましいと言えます。この2年間をどう過ごすかで、開業後の40年に大きな影響を与えることを忘れないで欲しいと思います。
忙しくて考える時間がない...
よくお聞きする言葉です。経験則として言えるのは、忙しい先生ほど忙しいとは言いません。日々診療に没頭して患者さんやスタッフから高い評価を得ている先生は、どうみても明らかに忙しいわけですが、その中で自己研鑽をしながらも会社をまとめ上げています。覚悟があるので、時間を有効に使う意識と術を知っているのだと思います。
忙しい.. これはどの業界でも発する方はいますし、本当に忙しいケースもあるかも知れません。
が、開業に向かう大事な時期に忙しい..では、先が思いやられます。忙しい人ほど忙しさを見せず、さほど忙しくない人ほど忙しいと言う。厳しい言い方になりますが、“時間がない”ではなく“能力と覚悟がない”と言えるのではないでしょうか?
確固たる覚悟があれば、忙しい...という言葉は絶対に出ないはずです。
アドレナリンが出て、忙しさなど忘れて没頭するはずです。忙しい...と感じるのならば、そこの覚悟が劇的に甘いのと、なんとかなるという甘い見立てを持っているからではないでしょうか?
時間の管理や仕事の管理が出来ていないケースでも同様のことが言えます。優先順位をつけてなんなくこなせる方もいれば、ごちゃごちゃになって忙しいを作り出してしまう方もいます。開業後はさらに忙しくなりますので、開業前の段階で忙しい...脳をお持ちの先生は、開業は慎重に考えることをお勧めします。
忙しくて時間がない...
繰り返しますが、開業は保留しておいたほうが賢明です。
2億の融資を受けて、毎月の返済がある中で、忙しい...では、間違いなく事業を潰します。
先生を信じて働いてくれているスタッフ、来院してくれている患者さん、関係各所に迷惑をかけることになりますので。
建築費用の高騰、導入機材のコンテンツ増、スタッフ賃金の上昇...
開業にかかる費用は、この数年で大きく増加しています。
その中で、先生の求める歯科医療を真摯に提供し、事業として成り立たせていく必要があります。
ご自身の城を持ち、地域のために患者さんのために適切な歯科医療を提供したい!そんな先生は応援したい気持ちでいっぱいです。同時に開業してから困って欲しくはありません。
必要なのは、覚悟です。
覚悟がなければ、覚悟が出るまで待つ、または覚悟を作る。
覚悟ができたなら、「忙しい...」という言葉を捨てて、開業まで一直線で進んでいって欲しいと思います。
「たかが数値。されど数値。」
医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢