売上と利益の関係性 #売上が5%減ったら利益は何%減りますか?

今回は売上と利益の関係性について書いていこうと思います。
売上は説明するまでもなく、日々の診療の結果として出る数値です。利益は、5つの利益に分かれます。売上総利益・営業利益・経常利益・税引前利益・当期純利益の5つです。今回書いていく利益は、営業利益となります。※本業で生み出される利益である営業利益を重視し、その下に位置する経常利益・税引前利益は無視して考えていきます。
利益について2024年6月のコラムで書いてますので、この5つの利益がわからないとう先生は過去のコラムを一度ご覧頂ければと思います。過去コラムはこちら 利益ごとに見る経営判断 #各利益の意味を理解していますか?
では、早速質問です。
患者の減少により売上が10%減りました。営業利益は何%減りますか?
1、10%
2、10%は減らない
3、10%より大きく減る
どうでしょうか?
ここで、間髪入れずに1を選んだ先生がいらっしゃるのではないでしょうか?
だとすれば、思い切りは良いのですが、経営者としては最低限の勉強が必要なレベルとなります。
2を選んだ先生は、1を選んだ先生よりも経営を知る必要性があるかもしれません。
3を選んだ先生は、完全に理由をしているのであれば◯、なんとなく正解したのであれば、ここでしっかり覚えて頂ければと思います。
わかりやすい数値で検証してみましょう。
例)医療法人の歯科医院様
売上 100,000,000円 変動費 20,000,000円 固定費 70,000,000円 営業利益 10,000,000円
上記のような歯科医院があったとします。
ここで一度、逸れます。
変動費と固定費、この違いがわからない...という先生がいらっしゃるかもしれません。
会計事務所さんからの試算表を見ても変動費とは書いていませんし、そもそもそういう分け方で考えたことがないという先生も多くいらっしゃるかもしれません。
ただ、医院経営をしていく上で、この意味がわからなければ売上目標は絶対に立てることができません。
なぜならば、固定費と変動費を分けないと損益分岐売上は出せないからです。
税金ばかりを考えた試算表は変動費・固定費がごっちゃになっています。変動費と固定費がごっちゃになっていても、最終的な利益は同じなので間違いではありません。しかし、戦略を組む観点で言うと、全く意味をなさない資料と言えます。
こちらについても過去のコラムで書いていますので、振り返りをしたい先生はご覧になってからまた戻ってきて頂ければと思います。 過去コラムはこちら 固定費を知ろう #固定費を知らずしての経営はあり得ません
本題に戻ります。
売上1億に対して、変動費率は20%、固定費は70% 、営業利益は10%というバランスの医院です。
では、売上が10%減少したらどうなるか見てみましょう。
【経費が同条件で売上が10%減少】
売上-90,000,000円
変動費-18,000,000円(売上と連動するので同じ割合で減少)
固定費-70,000,000円(売上と連動しないので金額は変わらず)
営業利益>90,000,000-18,000,000=72,000,000(売上総利益)-70,000,000円=2,000,000
営業利益は、2,000,000円となり、80%減少となります。
なので、質問の正解は3の大きく減少するになります。
※固定費は変わらないのがポイントとなります。人件費も変動がないものとして考察していますのでご了承ください。
では逆に、みんなで頑張って回転率を上げて総来院数を増やし、且つ自費も高めていくことで10%売上が上がったとします。先の質問の流れと答えより、売上が10%増加したから営業利益も同じように10%増加する!と答える先生はいらっしゃらないかと思います。
【経費が同条件で売上が10%増加】
売上-110,000,000円
変動費-22,000,000円(売上と連動するので同じ割合で減少)
固定費-70,000,000円(売上と連動しないので金額は変わらず)
営業利益>110,000,000-22,000,000=88,000,000(売上総利益)-70,000,000円=18,000,000
営業利益は、18,000,000円となり、1.8倍となります。
如何でしょうか?
売上の増減と同じ割合で利益が増減するのではなく、固定費の存在により大きく増減することがお分かり頂けるかと思います。
では、苦しい時は固定費を下げればいいのか?
答えはNOです。経営の基本的な考え方としては固定費を下げることを第一に考えますが、歯科医院経営では、固定費を下げることは難しいというのが個人的な意見です。固定費の中に明らかに無駄なものがあれば当然テコ入れは必須ですが、様々な医院様の財務諸表を拝見する限り、接待交際費以外は削れないケースが多いです。
一番負荷の大きい人件費に手をつけようものなら最悪です。利益の確保は一時的に可能になりますが、継続性はなく、医院はどんどん縮小傾向となります。では変動費を下げる?これも答えはNOです。変動費を下げるということは、技工所さんをやすいところに変えることで利益率を上げる、または歯科ディーラーさんを競わせてとにかく安く材料を仕入れるという動きになるケースが多いかと思います。
技工所さんを変えることで仕入れ額は下がるかもしれませんが、品質は担保されるのか?
歯科ディーラーさんを競わせることで変わる金額は微々たるものです。それをスタッフさんが一生懸命電卓を叩き発注をすることによる時間のロスは? 結果的に生産性が落ちるのであれば本末転倒ですし、歯科ディーラーさんは物だけではなく有意義な情報も届けてくれる大事な存在です。それを価格だけで振り分けするのは如何なものか...
変動費・固定費は減らせないものとして理解して、以下に粗利を増加させるか戦略を組むことです。
よく言われる言葉で「売上を1%増やし、変動費を1%減らし、固定費を1%減らす」というのがあります。
今は物価高の時代になり、変動費の1%減、固定費の1%減は現実的に不可能に近いものであると思います。
実際に経営者目線で言うと、人件費も増加傾向にあるので、この考え方は使えないものです。
であれば、やるべきことは一つ。
売上を如何に高くして粗利益額を増やすか!
これに尽きます。
そのために、様々な医院数値からヒントや根拠を得て、医院を整えていく。
そこから戦略を考えて実行し、トライ&エラーでループさせていく。
それこそが大事なことなのではないかと思います。
自院の状況を把握し、◯%上がったら?◯%下がったら?を一度計算してみてください。
そこから逆に見えてくるものがあるかもしれません。
「たかが数値。されど数値。」
医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢