スタッフの応募が来ない... #自身に置き換えて勤めたい医院だと思えますか?

今回はスタッフ雇用について書いていきたいと思います。
人材難の時代が長く続いている中で、歯科業界もこの10年ほど、かなり厳しい状況にあると言えます。
この先も同様か、更に厳しい状況になるのは、先生方も容易に予想がつくことと思います。
歯科衛生士の現状を整理してみましょう。
厚生労働省の資料によると、2020年時点の就業歯科衛生士数は142,760人となっており、2018年よりも10,131人の増加となっています。
しかしながら、日本の歯科医院数は67,500件ほどあり、他に歯科衛生士が就職可能な業種もあることから、絶対数が完全に不足していることが読み取れます。
仮に67,500件の歯科医院に、均等に歯科衛生士を振り分けたとしても、1医院-2人しか行き渡らないこととなります。
歯科衛生士が多数いる医院と、1人または皆無の医院も数多くあるのが現状となっており、雇用の偏りが非常に大きく、その流れは更に加速していくと思われます。
歯科衛生士学校の入学者数はどうでしょうか?
こちらも厚生労働省の資料からになりますが、2023年の入学者数は、8,428人、2019年の7,876人から増加傾向にあります。
ただ、増加と言っても微増レベルで今後も増加が継続するかは不透明なところかと思います。
出生率も低下している中なので、如何にして歯科衛生士の魅力を発信していけるかが業界全体の大きな課題です。
地域の歯科医師会と歯科衛生士会がタックを組んで、裾野を拡大する努力をしないといけない。
ただ、その流れはほとんどないと言っても過言ではないと思います。
仕事の関係で様々な地域に行かせていただいてますが、しっかりとした取り組みを行っている地域はほぼ皆無だと感じます。
小学生・中学生・高校生に訴求し、歯科衛生士を目指す学生を増やしていかなければ今後もこの厳しい状態がずっと続くことになります。
現場、業界をあげて取り組みをしていく必要性がありますね。
歯科医院で働く職種は、歯科衛生士だけではなく、受付・歯科助手・歯科技工士がいます。
最近では、管理栄養士・保育士・看護師等を雇用している医院も見受けられます。
歯科医療を提供する上で、上記の職種の方々を雇用しなければなりません。
ですが、雇用に困らない医院は一握りで、多くの医院は雇用に困っているのが現状ではないでしょうか?
本題に入ります。
ではなぜ、雇用に困るのか?
答えはシンプルです。
働くにあたり“惹きつける魅力がない”からです。
先生が働く側に立って自院を見た時に、働きたい!と思う魅力はありますか?
「魅力がないかも...」
と思う場合は、全くその通りで魅力がないので、応募は来ないということで正解です。
「魅力はそんなにないかもしれないけど、他医院と同等の条件だと思う!」
と思う場合は、条件が中途半端で魅力がそんなにあるわけではないので、応募は来ません。
他の医院がいくらぐらい給与を出しているのか、気にかけて他医院の求人情報を見ていませんか?
地域の相場が250,000であれば、250,000で合わせていませんか?
220,000であれば、220,000で合わせていませんか?
相場を合わせて、応募が来るのは魅力がある医院だけです。
魅力が少ない医院は、相場を合わせても応募は来ないんです。
※魅力のある医院はそもそも福利厚生・給与も高いので相場以上であることが圧倒的に多いですが..
そもそもですが、スタッフに給与を沢山出してあげたいと思っているか否か。
「できれば極力安く雇用したい!」
そう思っている先生は、残念ながら今後もスタッフ雇用には苦労し続けることになります。
保険診療からシフトチェンジして、腕を磨いて、自費専門で1人で診療できる体制を作っていくことをお勧めします。
忘れてはいけないのは、歯科医院は典型的な“労働集約型”の業種であるということです。
どんなに先生に技術があろうが、人柄が良かろうが、スタッフがいなければ始まらない...
“スタッフ”が歯科医院を経営していく“源”であるということです。
共に働いてくれているスタッフの適正給与はいくらなのか!
近隣の歯科医院と比較するのではなく、一般企業と比較することをお勧めします。
歯科衛生士には看護師と同等の給与をあげたい!
歯科助手や受付にも一般企業のOLと同様の給与をあげたい!
そう思える先生は、行動に表れるので、スタッフ雇用には困らないはずです。
歯科医院での労働は激務です。
その激務をこなしているスタッフに対して、民間よりも安い給与で良いのでしょうか?
それは自身が身を置く仕事のレベルを、自らが下げているということにならないでしょうか?
スタッフさんに本来渡したいお給料はいくらですか?
また、一般企業に負けない福利厚生を実現する覚悟はありますか?
一度整理してみるのが宜しいかと思います。
そこで覚悟がなければ、スタッフ雇用に困る未来を逆に覚悟したほうがいいです。
最低賃金に合わせている様では応募は来ません。
業界のトップの給与・福利厚生を掲げられる医院を目指すことで雇用には困らなくなります。
どっちが長い目で見た時に、そして日々の診療でプラスを感じるでしょうか?
他医院ではなく自院で本当に提供したい給与を定める
有給休暇の完全消化を実施する
社会保険は当たり前に完備とする
退職金等の手当を分厚くする
週休2日制は当たり前
診療終わりを早め退勤時間を一般企業と同等にする
上記がざっと考えられる雇用に向けて重要な要素です。
該当してない項目がある場合は、早急に改善されることをお勧めします。
雇用に困っている間に、患者さんは離れていきます。
目に見えない損失は、実は医院に大きなダメージを与えていることもあります。
スタッフがイキイキと働いていない医院は、スタッフが悪いわけではなく、満足度が低いことが原因であることもあります。
医院側から提供する給与や福利厚生により、スタッフの表情やモチベーションは変わります。
先生のいうことを実行してくれいない医院は、不満が対価を上回っていることが原因であることもあります。
安い給与で多くを求めても、誰が頑張ろうと思うでしょうか?
シンプルに、
「自分が働くとしたら、勤めたい医院と言えるのか?」
自問自答してみる機会をつくり、
自院を見つめ直し、雇用に向けての体制を整える。
スタッフに困っている医院は、まずそこから考えてみてはいかがでしょうか?
「たかが数値。されど数値。」
医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢